ところが、菜々ちゃんは法廷でこんな証言もしたのだった。
「ワシな、覚醒剤を使っているんや、ヘヘッ」――こんな電話を、以前、野崎氏からもらっていたというのだ。この証言は、裁判員や裁判官が「野崎氏が覚醒剤を使っていた可能性を否定できない」と判断させる要因のひとつになった。
覚醒剤か氷砂糖か
無罪判決に至るもう一つのポイントとなったのは、覚醒剤の密売人Xの証言だ。
10月1日の公判に証人として出廷した覚醒剤の密売人Yは、早貴被告と見られる女性に現金と引き換えに覚醒剤を手渡したと証言した。
ところが11月7日に出廷したXは、Yと一緒に取引現場に出向いたものの、自分が用意した“ブツ”は、氷砂糖を砕いたものだったと証言したのだ。
早貴被告は自分がネットで見つけた覚醒剤の密売人と連絡を取り、覚醒剤を購入したということは認めているが、そのブツを野崎氏に渡したところ、後日、「あれはニセモノや、使い物にならんかった」と言われたと証言している。
Xと早貴被告のこの証言が事実であれば、早貴被告が覚醒剤だと思って購入した品物は氷砂糖であり、野崎氏の死亡原因となった覚醒剤は、別の何らかのルートで入手されたもの、ということになる。
密売人Xの証言も、「早貴被告が野崎氏に何らかの方法で覚醒剤を過剰摂取させ、死に至らしめた」という検察が訴えるストーリーを否定する働きをしたのは否定できない。