「勃たせるため」に買った覚醒剤ならなぜ一人で寝室にいるときに使うのか
だが、早貴被告の一連の証言について「ウソだ」と指摘する人物もいる。野崎氏が経営していたアプリコの番頭格で、野崎氏と結婚した早貴被告の生活のフォローもしていた通称“マコやん”である。野崎氏と早貴被告の生活をもっともよく知る人物と言っていい。
早貴被告は覚醒剤の購入について「社長(野崎氏)から『覚醒剤を買ってくれ』と頼まれたので買った」と証言しているが、マコやんは「まずそれがウソ」と断言するのだ。
野崎氏が自宅寝室で亡くなっているのが発見された後、当時、自宅にいた早貴被告とお手伝いさんの大下さんは、連日警察の事情聴取を受けた。
そして警察での聴取を終えて2人が自宅に戻ると、これまた連日、野崎氏の自伝『紀州のドン・ファン』のゴーストライターを務めたジャーナリストの吉田隆氏とマコやんが、改めて事件前後の野崎氏の様子や、警察での聴取の内容などを繰り返し聴いていたのだ。
2人は嫌な顔もせず、1階のリビングに腰掛けて、事件当日の様子や、その日に警察から聴かれたことを喋っていたという。
その際、早貴被告は、野崎氏が覚醒剤を使っていないことを認める一方、自身が密売人から覚醒剤を購入したことについても全く喋っていなかった。
公判で証言したように、野崎氏に頼まれて覚醒剤を購入していたが「ニセモンや、使い物にならんかった」と言われていたのなら、その通り取り調べや吉田氏とマコやんへの説明の段階で話しておけばよかったはずだ。
考えられるのは、当初は覚醒剤の購入を当局に把握されることはないと踏んでいたが、検察が密売人の存在を把握していることをキャッチしたため、野崎氏から頼まれて購入したという“ストーリー”を後付けで作り上げた可能性だ。
そもそも、野崎氏にせっつかれてからネットで検索し、易々を覚醒剤を入手したということ自体、ちょっと考えにくい。
マコやんが言う。
「地元に人脈を持っている貸金業だった社長が仮にもし覚醒剤が必要ならば電話1本で調達することも可能だったはずですから、地元に知り合いも土地勘もない早貴被告に頼む必要などあり得ないんです。なにより、覚醒剤のことを忌み嫌っていた社長が依頼するとは考えにくい。そう考えると、社長に頼まれて覚せい剤を購入したという話が、作り話に思えてならないんです。
第一、『勃たないから』という理由で覚醒剤を購入したとしたら、なぜ一人で寝室にいるときに使うのか。早貴被告は社長とはセックスしなかったと言っている。社長はセックスする相手もいないのに、勃起させるために買った覚醒剤を服用したんですか? おかしな話じゃないですか」