ドン・ファンと菜々ちゃんの大喧嘩
無罪判決に至る一つのきっかけになったと考えられる、菜々ちゃんによる「ワシ覚醒剤を使っているんや、へへへ」という証言については、吉田氏が「記憶違いがあるのではないか」という。
実は吉田氏やマコやんは、野崎氏が亡くなった後、菜々ちゃんから電話で、以前に野崎氏から「ワシ覚醒剤を使っているんや、へへへ」という電話をもらったと打ち明けている。
吉田氏によれば、菜々ちゃんから電話を受けたのは野崎氏が亡くなって1週間後の18年5月31日の朝だったという。
「菜々ちゃんは裁判で『社長が亡くなる20日ほど前に(覚醒剤)の電話を貰った』と証言しています。ドン・ファンが亡くなったのが18年の5月24日ですから、20日前というと5月4日前後ということになる。
しかしドン・ファンと菜々ちゃんは18年3月初旬に大ゲンカをして以降、菜々ちゃんはドン・ファンからの電話にもまともに出ないような関係になっていたのです。
その後、電話にも出ない菜々ちゃんにいらだったドン・ファンは誹謗中傷・罵詈雑言のメールを送りますが、それでも反応がなかった。すると今度は、菜々ちゃんと親しかったお手伝いの大下さんの携帯を借りて、そこから大下さんの名前で菜々ちゃんに罵詈雑言のメールを送っているのです。
大下さんから罵られたと思って菜々ちゃんは大きなショックを受けました。ですから、ドン・ファンと喧嘩して以降は彼の自宅には行っていないハズです。5月31日のボクへの電話で、ドン・ファンが大下さんの携帯を使ってメールを打っていたとカラクリを教えたら、『そうだったんですか』と驚いていたくらいです。
ところが公判では菜々ちゃんは『5月2日に社長の家に泊まりに行った』とも証言している。2人の喧嘩の経緯も知っているボクとしては、あり得ないという思いです。もしもドン・ファン宅に泊まりに行っていたのなら、ボクにもそのように伝えてくれると思うのですが、31日の電話では一切そのようなことは聞いていません。時系列の勘違いがあるのではないかと思うのです」
和歌山地裁での一審では、覚醒剤の売人の証言や早貴被告のスマホに入っていたヘルスアプリの解析による事件当日の早貴被告の行動の様子など、これまでに知られていなかった事実がいくつか明らかになった。
だが、事件の謎はまだまだ多い。果たして野崎氏は本当に間違って覚醒剤を大量摂取してしまったのか、あるいは早貴被告が何らかの方法で摂取させたのか。控訴審で野崎氏の死の真実は明らかになるのであろうか。