中居正広氏の降板についてもまともな説明をしていない
今回のBPOでの審査を、放送業界の体質改善につながる機会にしてもらいたいと思います。旧ジャニーズ事務所の性加害問題が取り沙汰される過程で、放送局の「不作為」と「ご都合主義」が疑問視されました。
もやもやした空気が拭えない中、今度は中居正広氏の女性とのトラブルが発生しました。震源地のフジテレビだけではなく、放送局全体に対しても、不信と不審が募っています。中居氏の降板や番組休止について、民放各局は相変わらず横並びで、「総合的判断」として実質的に何も答えません。そういう、ご都合主義が不信感を招いていることを自覚したうえで、言動で健全さを示すことが求められているのではないでしょうか。

2024年の一連の選挙報道において、SNSの威力を実感する一方で、テレビや新聞の影響力が相対的に低下しました。その現象を捉えて、「オールドメディア」だと烙印を押されました。
「オールド」は、当初は旧態依然、時代錯誤といった文字通り「古い」という意味でした。ところが、このところ、不健全とか不埒といったニュアンスが付け加えられているように感じます。テレビ局や番組にまつわる、ちょっとしたトラブルでさえも、過大なマイナス評価となって、「これだからオールドメディアは…」と断罪されることが増えている気がします。
もちろん、報道系番組の中には安定した視聴率で推移しているものもあり、テレビの底力を感じさせます。テレビ視聴が生活習慣に組み込まれていると思われる中高年世代が主な支持層ではありますが、テレビはまだメディアとして重要な一角を占めていると言えます。
不確かな時代だからこそ、厳密な取材や事実確認を行って、確かな情報を発信しよう——。制作現場には、そうした信念で真摯に仕事に向き合っている人が少なくないはずです。そんな現場や視聴者を無視して、スポンサーが喜ぶ手法を繰り出すことばかりに注力する方向性は、どう考えても異常です。
近視眼的発想と内向き志向によって、放送業界は「ガラパゴス化」を極めてしまうのではないでしょうか。外界から隔絶されたガラパゴス諸島の生物のように、放送業界も規制に守られ、独自の「進化」を遂げてきました。
しかし、進化の形に歪みが現れているようです。このままでは、その歪みが、テレビに対する視聴者の負の感情を増幅してしまうのではないか…。そう危惧します。
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