
「これは宣伝じゃないか——」テレビ番組の本編で、商品の広告宣伝をしている場面に出くわすことが実に多い。スポンサーに恩を売るのに躍起で、視聴者に見透かされようが、呆られようが構わずといった感じだ。
そんな中、放送倫理・番組向上機構(BPO)がTBSのバラエティー番組について、「広告と誤認される疑いがある」として、放送倫理違反の有無を調査するため審議入りした。果たして、BPOの目的である「放送業界の自浄機能の確立」に合致する判断がなされるのか。タレント中居正広氏の女性トラブルもあり、放送やテレビ局の体質に不信感が広がる昨今、BPOの判断は非常に重要な意味を持つだろう。
(岡部 隆明:ジャーナリスト)
放送時間のほとんどで「ニトリ」と表示
BPOの放送倫理検証委員会は、2024年10月19日に放送されたTBSのバラエティー番組『熱狂マニアさん!』について、「広告と誤認される疑いがある」として、審議入りすることを明らかにしました。番組では、インテリア大手「ニトリ」の商品を多数紹介するとともに、ほとんどの放送時間で、画面左上に「ニトリ」と表示されていたということです。
委員会は、放送倫理上の問題の有無を調べて結論を出します。なお、TBSは「審議入りの事実を重く受け止め、引き続き真摯に対応してまいります」とコメントしています。(1月10日朝日新聞デジタル)
このニュースに接して、TBSの別のバラエティー番組を思い出しました。それは、38年間続いた長寿番組『世界ふしぎ発見!』の後番組として、2024年4月にスタートしたマネーリサーチバラエティー『いくらかわかる金(かね)?』です。
その初回放送で、4つのコーナーのうち、2番目は「ニトリで一番買う人の購入金額はいくらかね?」というテーマでした。私は「これはニトリの宣伝だな」と思いながら見ていました。『ふしぎ発見』が好きだったこともあって、「浮かした番組制作費は、いくらかね?」という嫌味な感情さえも湧いてきました。
ゴールデンタイムのバラエティー番組の中で、これだけ会社と商品を宣伝してもらえれば、ニトリは大喜びするだろうと想像しました。「宣伝効果は、いくらかね?」と言いたくなるほど、宣伝の色彩が濃い展開でした。
こうして恩を売ることによって、TBSはニトリに対して、今後のCM出稿の増量・増額を期待したのでしょう。持ちつ持たれつ、相互互恵関係を築けるのかもしれません。「お値段以上」のメリットを双方が享受できたので、『熱狂マニアさん!』でも、再び甘い汁を吸おう、ということになったのではないかと邪推しています。
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