ヒメイカが採る驚きの配偶者選択とは
佐藤:動物は、オスもメスも自身の子孫をたくさん残すために最も適した相手を選ぼうとします。自然界でよくみられるのは、オス同士の闘いの勝者がメスと交尾をする、メスは良い要素を持ったオスを選んで交尾するという形式です。
これは性選択と呼ばれ、ダーヴィンが提唱したアイデアです。性選択により、その生物が生きる環境に適した形質が受け継がれ、進化していくと考えられます。
オスとメスは姿かたちは違いますが、いずれも交尾を達成するために有利な形質が進化していくと言われてきました。
1990年代後半には、交尾をした後もオスの闘いは続くだろうという考え方が生まれました。というのも、自身が送り込んだ精子が卵子と受精しない限りは、オスは子孫を残すことができないからです。
2個体、3個体のオスが1個体のメスと交尾をすると、複数のオスの精子がメスの体内に入ることになります。その中のどの精子が受精するかは、メスの体外で繰り広げられるオスの闘いには無関係です。
そう考えると、交尾の後もオス同士の闘いはメスの体内で延長戦となりますし、メスもオスの精子を受精に使うかを選ぶ作業を交尾の後に行っているかもしれません。
そういう交尾の後に起こりうるメスによるオス選びは、普通に見ることができないため「密かなメスの配偶者選択」と呼ばれています。
私は、ヒメイカはCFCをしていると考え、博士課程からその研究をしています。

──ヒメイカをはじめとするイカ類の繁殖方法について教えてください。
佐藤:イカを含めた頭足類は、複雑な過程を経て精子の受け渡しから貯蔵までを行っています。