「イカはバトンパスのようにオスがメスに精子を渡している」
佐藤:哺乳類の場合は、オスの交尾器をメスの交尾器に挿入して射精をすることで精子を受け渡しています。けれども、頭足類は交尾器を持ちません。徒競走のリレーのバトンパスのように、オスがメスに精子を渡しています。
頭足類のオスは、精子がたくさん詰まった精莢(せいきょう)と呼ばれるカプセルを掴んでメスに渡します。精莢が渡されると、カプセルの中から精子が入った袋(精子塊)が自動的に飛び出るような仕組みになっています。この精子塊がメスの体に付着して、メスへの精子の移送が完了します。

この精子塊は短期的な精子の貯蔵力しか持ち合わせていないため、精子塊の先から精子がどんどん漏れ出ていきます。漏れ出た精子は、メスの体内にある精子の貯蔵器官である貯精嚢と呼ばれる袋に入っていきます。これで、長期的な貯蔵の完了です。
──ヒメイカがCFCをしていると考えた根拠を教えてください。
佐藤:先ほど説明したように、頭足類では精子塊がメスの体外で渡されます。これが大きなポイントです。
多くの動物では、CFCはメスの体内で起こると言われています。したがって、メスがオスの精子を選んでいる様子がはたから見て全くわかりません。
それに対して、体に精子塊がくっついている状態というのは、それをメスがどのように扱うのかを観察できるということです。
ヒメイカのメスは交尾後、非常に特徴的な行動をします。ヒメイカのメスは口がよく伸びます。それを使って、体の外に付いている精子塊をついばみ、捨てていたのです。
これは、嫌なオスと交接してしまった場合、そのオスの精子を捨てているのではないかと私は考えました。