過去にもグリーンランド購入の打診

 パナマ運河発言とほぼ同じ12月下旬、トランプ氏はグリーンランド購入にも言及しました。

 次期駐デンマーク大使を指名した際、自らが創設したソーシャルメディア(SNS)で「国家安全保障と世界の自由のため、米国はグリーンランドを所有し、管理することが絶対に必要だと感じている」と投稿したのです。

グリーンランドはデンマーク領だ(写真:M21Perfect/Shutterstock.com)

 トランプ氏は大統領1期目の2019年にもグリーンランド購入を主張しましたが、デンマーク政府は強く反発し、立ち消えになっていました。トランプ氏が大統領再選を決めたのを機に蒸し返された形ですが、デンマークのフレデリクセン首相は「グリーンランドは売り物ではない」と全面拒否の姿勢です。

 グリーンランドは17世紀からデンマークが植民地支配を続けましたが、1979年に自治政府が発足、2009年には独立を主張できる権利を獲得しました。地理的にはデンマークよりも北米大陸に近く、欧州と北米を結ぶ航空路線の多くがグリーンランド上空を通過します。戦略的に重要性の高い世界最大の島なのです。

 実は、米国は80年近く前にもグリーンランド購入に意欲を示したことがあります。米ソ冷戦初期の1946年、当時のトルーマン大統領はデンマークに対し1億ドルでグリーンランド購入を打診したのです。米国の歴史を振り返ると、ルイジアナはフランスから、アラスカはロシアから買収した土地です。トランプ氏の考えでは、グリーンランド購入も荒唐無稽ではないのかもしれません。

 グリーンランドにはすでに米軍の基地があり、ミサイルを探知するレーダーも配備されています。また、地球温暖化の影響で北極圏の氷の面積が縮小し、新たな北極海航路の開発を米国、ロシア、中国などが競っています。

 さらに、グリーンランドには多くのレアアース(希土類)が眠っているとされ、中国が開発に意欲を見せています。トランプ氏のグリーンランド購入論にも経済的な思惑があるのは間違いありません。

 とはいえ、グリーンランドの住民の間では、デンマークからの独立論が盛り上がりを見せており、トランプ氏の主張には強い反発が予想されます。実際、グリーンランド自治政府のエーエデ首相は、米国の一部になることには関心がないと強調しています。

 一方で米国と経済的な関係を強化したい住民がいるのも事実。そうしたなか、トランプ氏の息子のトランプ・ジュニア氏がこの1月上旬にグリーンランドを訪問して住民と交流しており、今後の行方が注目されます。