カナダ・トルドー首相は“最初の犠牲者”

 カナダのトルドー首相は2024年11月下旬、大統領選で勝利したトランプ氏のフロリダ州にある私邸を訪問し、会談を行いました。そこで出たのが、「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」というトランプ氏の発言です。

 当初はカナダ側も冗談だと受け止めていました。しかし、トランプ氏がSNSでトルドー氏を「偉大なるカナダ州知事」と呼ぶなど、カナダを米国の一部に組み入れる考えを繰り返し示したため、冗談と言えなくなってきました。

トランプ2.0の最初の犠牲者とも言われるカナダのトルドー首相(写真:AP/アフロ)

 トランプ氏は大統領選の後、中国に10%の追加関税を課すほか、中国企業の自動車を生産して米国に輸出しているカナダやメキシコに対しては25%の関税を課す方針を発表しました。トランプ氏を訪問しても事態の打開を図れなかったトルドー首相に対しては、カナダ国内の支持が減少し、今年1月には辞任を発表することになりました。

 米国ではトルドー氏を「トランプ氏の大統領選勝利による世界で最初の犠牲者」と揶揄(やゆ)する声もあります。

 トルドー氏は「灼熱の地獄に雪玉」という慣用句を使って、カナダの米国入りはあり得ないと断言しました。ただ、トランプ氏は「米国の州になれば関税はかからない」とカナダをけん制しています。

 トランプ氏は違法薬物や不法移民の流入も指摘しながら、カナダに対し国境管理の強化を要求してきました。また、気候変動対策など政策面での違いや、安全保障面で米国に頼りながら十分な対価を支払っていないことへの不満も抱いているようです。