神はバベルの塔の何が気に入らなかったのか
ヘブライ聖書によれば、そこに古代バビロニア帝国の人々が信じられないほどの超高層建築物を建築しだしたのである。
神はこれをご覧になり危機感を持たれた。
「なんだ? なんだ! なんだ。いったい人間どもは何を造り出したんだ。私のいる天にまで届かんとするような超高層建築物ではないか。人間どもは放っておくと何をしでかすか分からない。そしていずれ人間どもは、この超高層建築物を神のように崇め奉るに違いない。あの人間どもは背の高い尖ったものを神聖なものと勘違いして、それを信仰するという馬鹿な傾向がある。これは放っておけん」と神は考えられた。
ところで、このブリューゲルの絵をよく見ていただければ分かるように、バベルの塔は建築途中で中断している。つまり、未完成の塔なのである。中心部分は赤煉瓦で造られており、雲の上に突き出るぐらいに高いが、目をこらして見ると分かるように、壁は完成していない。足場がそのまま残っている。
さらに、下の方の入口部分も未完成のまま土積みされており、多くの工事車両が行き来している。左の方では石切り職人が石を切ろうとしているが、何やら領主との間で揉め事があるようである。実はこの揉め事は工事が中断してしまって、にっちもさっちもいかなくなった場面なのである。
ではなぜ工事が中断したか? それは神が工事を止められたからである。
神が工事を止める方法はいくらでもあり、単純に地震を起こす、あるいは大津波を起こす、強風を起こす、雷を落とすなどして、このバベルの塔を壊してしまうことができる。
ところが、神はどういう訳かそのいずれの方法も取られずに、実に変わったやり方を取られた。というか、そのやり方しか、将来何千年にもわたって人間がこのような超高層建築物を造ることを止める方法を思いつかれなかったからである。