扶養の壁を超えて、厚生年金保険と健康保険に加入するメリットは?
社会保険に加入して働くと手取りは減りますが、老後には国民年金からだけでなく厚生年金からも年金がもらえます。厚生年金(老齢厚生年金)の金額は厚生年金加入中の給与や加入期間などによって異なります。
「年収105万円(扶養内)の勤労収入の手取り合計」と「年収106万円(社会保険加入)の勤労収入の手取り合計+年金増額」を比較してみました。
【前提条件】
・被扶養者の年齢40歳
・被扶養者の所得控除:基礎控除、社会保険料控除(社会保険加入時)
・所得税は復興特別所得税を考慮して試算
・40歳から65歳まで同年収で勤務
・公的年金は65歳から受け取り開始
<年収105万円(扶養内)と年収106万円(社会保険加入)の比較>
年収106万円(社会保険加入)の手取りは年89.1万円になります。税金と社会保険料合わせて16.9万円を支払います。
年収105万円(扶養内)の手取りは103.7万円ですから、年収106万円(社会保険加入)との差は14.6万円です。年収が1万円増えるだけで、この差が生まれるわけですから働き控えしたくなる気持ちはわかります。
とはいえ、厚生年金に加入するメリットも大きいです。
厚生年金は正しくは「厚生年金保険」であり、長生きリスクに備える保険です。
90歳より長生きした場合は、よりたくさん年金を受け取れるわけであり、厚生年金に入っていてよかった!と思うはずです。「90歳以上長生きしないと損」と見るのではなく、将来の不確実性に備えるのが保険であることを重要視してほしいと思います。
年収129万円(扶養内)と年収130万円(社会保険加入)の比較結果は次のとおりです。
<年収129万円(扶養内)と年収130万円(社会保険加入)の比較>
年収130万円(社会保険加入)の手取りは年107.5万円になります。
年収129万円(扶養内)の手取りは124.1万円ですから、手取りの差は16.5万円です。
しかし、「手取り合計+年金増額」に目を向けると、先ほどの結果とは異なり、85歳より長生きすれば厚生年金加入へのありがたみが出てきます。
上記試算は「1万円」の違いで比較していますが、働ける(働きたい)分だけ働いた場合は、将来もらえる年金額はもっと増えます。
壁を超えて働いたら厚生年金はいくら増えるのか、早見表を用意しましたので、ぜひご参考ください。
<増える年金額の早見表>
加入する社会保険は厚生年金保険だけでなく、健康保険もあります。
健康保険に加入することで、出産や病気・ケガなどで仕事を休まなければならない場合、出産手当金や傷病手当金をもらうことができます。支給額は、休む前の日給(月給÷30)のおおよそ3分の2の金額です。この金額が会社を休んだ日数分もらえます。
出産手当金は出産で仕事を休む際にもらえるお金です。出産日(出産が予定日より後になった場合は出産予定日)の前6週間と出産日の翌日以降の8週間、合わせて98日間は産休をとることが認められています。出産手当金より少ない給与が支払われている場合には差額がもらえます。
傷病手当金は、業務外の病気やケガが原因で仕事を休む場合にもらえるお金です。
最長で通算1年6カ月にわたってもらえます(傷病手当金より少ない給与が支払われている場合には、その差額がもらえます)。
「通算」ですので、途中で一度仕事に復帰したものの同じ病気・ケガで仕事ができなくなったという場合にも、引き続き傷病手当金をもらえます。
なお、国民健康保険には出産手当金および傷病手当金の制度はありません。