「税法上」「社会保険上」で異なる扶養
自分で稼いだお金だけでは生計を立てられない家族や親族に対して、経済的な援助をすることを扶養といいます。
「夫(妻)が妻(夫)を扶養する」とは、夫(妻)が妻(夫)を養う、ということです。夫婦だけでなく、子どもや両親などの援助をすることも扶養です。以降、扶養する人のことを「扶養者」と呼びます。
扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養の2つがあります。
税法上の扶養は、扶養される夫または妻や子どもなど(以下「被扶養者」)の年収が103万円以下の場合に利用できる制度です。
給与収入が年103万円以下であれば、所得税がかかりません。しかし、被扶養者の給与収入が年103万円を超えると、被扶養者本人が所得税を納める必要が出てきます。
被扶養者が税法上の壁を超えると、超えた分に税金がかかります。
年収が104万円だった場合、103万円を超えた分、つまり1万円に対して所得税がかかります。所得税は1万円×5%=500円(年額)となります。手取りへの影響は軽微です。
また、扶養者が、配偶者控除や扶養控除といった所得控除が受けられなくなることで、扶養者の所得税額がアップします。結果として世帯の手取り収入は減少する可能性があります。
一方、社会保険上の扶養とは、会社員や公務員が加入する健康保険や厚生年金保険の被扶養者になることのできる制度です。
被扶養者は、扶養者の健康保険の扶養に入っていれば、保険料の追加の負担なく医療費が原則3割負担になります。また、被扶養者は、国民年金の第3号被保険者となり、国民年金保険料を負担する必要がなくなります。
社会保険上の扶養に入るには、被扶養者の年収が130万円以下である必要があります。年収が130万円を超える場合は、扶養から外れて自分で社会保険に加入し、社会保険料を支払わなければなりません。
ただし、年収が130万円以下でも、106万円を超えていると、働く会社の規模などの条件に当てはまると扶養から外れ、社会保険料の負担が発生します。
手取りに大きな影響を及ぼすのは、この社会保険上の扶養にかかわる「130万円の壁」と「106万円の壁」です。
被扶養者が社会保険上の壁を超えると、超えた分ではなく、年収金額(正確には標準報酬月額)に対して社会保険料がかかります。
後ほど詳しく解説しますが、ここでは106万円の壁を超えて年収が107万円になった場合の社会保険料(月額)を計算してみます。2024年度・東京都・40歳未満の場合、健康保険料 4391円+厚生年金保険料 8052円=1万2443円となります。年額では 14万9316円なので、手取り収入はガクッと減少することになります。
では、ここから「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」を詳しくみていきましょう。