この言葉にマコやんは憤る。
「大下さんが出廷できないことが分かって、早貴被告は大下さんに対して『言いたい放題』に舵を切ったのだと思います。大下さんが供述していた内容は事実です。ボクも何度も聞いたことですから、それを否定するのは意外でした。客観的に見て事実を言っているので大下さんの供述は中立的だったと思います。
それよりもアンフェアだというのなら、覚醒剤を購入していたことをわれわれに内緒にしていた彼女のほうが絶対にアンフェアです。
生前の社長が『ワシが亡くなったら大下さんには1000万円をあげる』と言っていたことはアプリコの従業員なら誰もが知っていることですが、社長が亡くなった2日後に突然、早貴被告が『社長は大下さんに3000万円あげてくれと言ってました』と大下さんに伝えています。おそらく自分に不利になるようなことは取り調べで供述しないでほしいという口止め料のつもりで出た発言ではないかと思います。ところが大下さんは、自分が見たままのことを供述していた。それにもう証人尋問に出てこられるような健康状態でもなさそうだ、ということで、大下さんがデタラメな供述をしていると主張し始めたのでしょう」
残る被告人質問は15日の裁判所側だけのものになった。どうやら検察側の切り札は「覚醒剤の売人の証言」と「健康アプリに記録された死亡当日夕方の早貴被告の異常な行動」の2つだったようだ。それを補強するために28人もの証人を呼んだのだろう。
ただ、早貴被告が野崎氏に覚醒剤を飲ませたという直接証拠はないのは事実だ。15日の被告人質問でどのようなやり取り流されるのか。そして一連の証言と証拠を、裁判官や裁判員たちはどのように判断するのか。裁判は最後の山場を迎えることになる。