なぜ事情聴取で覚醒剤購入の件を言わなかったのか

 当時、野崎氏宅で開かれた連日の“事情聴取”の様子について、マコやんはこう語る。

「2人は嫌な顔もせず、1階のリビングに腰掛けてその日に警察から聞かれたことを喋っていました。そのときには社長が覚醒剤を使っていないことも早貴さんは認めていました。ただ、自分が(2018年)4月に売人から覚醒剤を購入したことはわれわれに対して全く喋っていませんでした。

 今考えると、彼女は警察が売人のことまでたどり着けることはないと思っていたから黙っていたのでしょう。そうでなければ、『私、社長から覚醒剤を買ってくれと頼まれました』と、このときわれわれに言っても良かったハズです。

 そして何よりも、社長が本当に覚醒剤が欲しいのなら、貸金業をしていて地元に人脈が多いのだから、その気になれば電話1本で調達することも可能だったはずです。田辺にやってきたばかりの早貴さんに頼む必要などあり得ないのです」

野崎氏が亡くなった直後、自宅リビングで電話をする早貴被告とマコやん(撮影:吉田 隆)*写真は一部加工しています
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 司法記者が言う。

「警察は今回出廷した売人の存在に早々に気付いていて、事件の半年後には逮捕していました。早貴被告がその事実を知ったのは、逮捕・起訴されて、公判前整理手続きが始まってからだったと思われます。

 覚醒剤を買ったのか否か……どのように証言したらいいのか被告は悩んだことでしょう。全面的に否定したら、検察がどのような証拠を握っているのか分からないので、言い逃れできない証拠を突きつけられたら絶体絶命です。そこで覚醒剤を買った事実は認めたうえで『社長から買うように頼まれた』という筋書きを編み出したのではないでしょうか。

 もちろん検察側もそのことはお見通しでしょう。11日午後の検察側質問で『事件直後の警察の事情聴取のときにそのことを言わなかったのはなぜですか?』とツッコまれてしまいました」(司法記者)