3.トランプ仲介による和平交渉の見通し
トランプ次期大統領が就任するのは来年の1月20日である。水面下の交渉は早速始まるかもしれない。そうでなければ、大統領就任後24時間でウクライナ戦争は終わらせられないであろう。
トランプ氏のカードは、軍事援助(資金・武器)である。
ウクライナに対しては軍事援助の停止であり、ロシアに対してはウクライナへの軍事援助の増強である。
さらに、ロシアに対しては米軍のウクライナ派遣もカードとして使うかもしれない。
ロシアに対する経済制裁は、交渉締結の時に解除されるであろう。
さて、「政治は妥協の産物」であるといわれる。妥協とは、対立した主張について双方が譲り合って解決することを意味する。
和平交渉が成功するか否かは、ゼレンスキー氏とプーチン氏がどれだけ譲り合うことができるかにかかっている。
以下、上記第2項「和平交渉のこれまでの経緯」から、筆者が抽出・整理した和平交渉における主要な対立点と、その対立点の妥協案について筆者の考えを述べる。
(1)和平交渉における主要な対立点
ア.ウクライナの安全保障:ウクライナのNATO加盟
イ.占領地の地位問題:
・クリミア半島
・「ルガンスク人民共和国」および「ドネツク人民共和国」
・ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、南部のザポリージャ州とヘルソン州(「ルガンスク人民共和国」および「ドネツク人民共和国」は除く)
ウ.戦争犯罪等の処罰:
・集団殺害犯罪(ローマ規程第6条):児童を他の集団に強制的に移すことなど。
・人道に対する犯罪(ローマ規程第7条):文民に対する拷問・強姦、住民の追放または強制移送など。
・戦争犯罪(ローマ規程第8条):1949年8月12日のジュネーブ諸条約に対する重大な違反行為など。
・侵略犯罪(ローマ規程第8条の2):国の軍事的行動を、実質的に管理を行うかまたは指示する地位にある者による、国際連合憲章の明白な違反を構成する侵略の行為の計画、準備、着手または実行。
エ.戦争による損害の賠償