おわりに
今回の米大統領選において、米国民は「強い大統領」を求めた。また、道徳よりも経済を選んだとも言われる。
2013年8月31日、 バラク・オバマ米大統領(当時)は、シリアの化学兵器使用疑惑を受け、同国に軍事介入すべきだと決断したと表明した。
しかし、ロシアのプーチン大統領の斡旋によるシリアの化学兵器放棄案に合意し、軍事攻撃を回避した。
また2014年、オバマ米大統領(当時)は、ロシアによるクリミア併合の際、米国がウクライナで軍事行動に関わることはないと発言、外交を通じてロシアとの対立を解消する意向を強調した。
上記2つの事例は、プーチン氏に、ウクライナに軍事侵攻しても米国は軍事介入してこないというメッセージを送ることになってしまった。
そして、プーチン氏は2020年2月24日、ウクライナに軍事侵攻したのである。
事実、バイデン大統領は、ロシアが侵攻した場合に米軍をウクライナに派遣することは「検討していない」と述べた。
一方、トランプ大統領(当時)は2017年4月6日、シリアが化学兵器を使用したとしてシリアへの攻撃を命じた。
これは地中海に展開する2隻の米海軍駆逐艦から発射されたトマホーク巡航ミサイル59発による攻撃であった。
米国本土ではちょうどこの時、トランプ米大統領(当時)と中国の習近平国家主席が、米南部フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の私邸マールアラーゴで初の首脳会談を行っていた。
報道によれば、トランプ氏から攻撃について知らされた習主席は10秒間沈黙した後、通訳に「もう一度言ってほしい」と述べ、トランプ氏の「たった今、59発の巡航ミサイルをシリアへ発射した。あなたに知らせたかった」との発言を確認すると、最終的には「OKだ」と答えたとされている。
この時、国内外に、トランプ氏は「強い大統領」というメッセージが伝わった。
今の世界は、無政府状態である。
つまり、国家を取り締まる権威をもった組織が存在しない。第2次大戦後、国家を取り締まる権威をもった組織として国連が創設された。
ところが、今の国連は常任理事国同士の対立によって、機能不全に陥っている。
このような時代には「強いリーダー」が、待望されるのであろう。