核のイメージをそらすプロパガンダ
「広島平和記念資料館の協力のおかげで、細かなタッチがわかる原画を欧州の人々に見てもらうことができました」と氏は感謝を示す。
続く原爆投下後のアメリカのコーナーはひどく印象的だ。
原発キノコ形の水着でポーズをとるミス原発美女、核実験が見られる野外劇場、核実験の名残の雲の下で「天使のダンス」を踊るバレリーナ……。核で新時代を開いた国力を示す「スペクタクル化されたお祭り騒ぎの核実験」の写真が並ぶ。
ラスベガスのホテルでは核実験のキノコ雲がテラスで観賞できると宣伝され、ハリウッドには米軍の核プロモーション専用スタジオもあったそうだ。
ガリモス氏は言う「このコーナーを出る時、人々は気づくのです。すべては核のイメージをそらすためのプロパガンダだったことを」。原発が大衆文化化された時代。「核という存在が当たり前になり、危険が差し迫っていることを忘れます」とガリモス氏は続ける。それは今も同じ。
そして53年の国連総会。アイゼンハワー大統領の「平和のための原子力」の堂々たるスピーチと数々の原子力推進展示会で、核はアメリカのみならず欧州に広がる。ポストコロニアル(植民地主義以降)で核保有が国の力の指標にもなった。
それでも違和感を覚えるアーティストは世界中にいて、危機感をシェアすべく表現する。