「最初の原子爆発は私を震撼させた」と語ったダリ
イギリスのリチャード・ハミルトン (高松宮殿下記念世界文化賞も受賞)の「映画の有名な怪物、ヒュー・ゲイツケルの肖像画」(64年)は、反核路線を拒否した労働党党首を彼の写真とホラー映画雑誌、映画『アトムブレインを持つ生き物』を混ぜてコラージュ。道徳の破綻と核による突然変異の苦痛を見せつけた。
「最初の原子爆発は私を震撼させた」と語ったダリは、ダークな「ウラニウムとアトミカのメランコリカ牧歌」(45年)や、宗教、物質、重力が溶解した「ポルト・リガトの聖母」(50年)を描く。
イヴ・クラインは彼のブルーと人拓テクニックで「Hiroshima (ANT79)」(61年)を、ウォーホルは驚きから恐怖、そして重い無を感じさせる「原爆- 赤い爆発」(63年) を生んだ。
他にもモンドリアン、フォンタナ、ムーア、ベーコン等々、そして世界各国の芸術集団が核への恐怖、悲しみ、怒り、人間の愚かさを訴える。
「アーティストたちの大部分が実際、核に対し批判的です」とガリモス氏。展覧会の真ん中は、涙か血で描いたと思えるくらい悲しみのあふれる絵や、巨大な破壊力による地球破滅の不安や恐怖を表す絵が列をなしている。
冷戦時に生まれた「シェルター」に関する展示もある。大金を費やして核を作り、また大金を費やしてシェルターを作る世界のアイデアが、現実味のないオブジェのごとく見られる。
幼い頃に一時流行った単語だったことを思い出したが、核が怖いというより裕福層向け新製品のイメージがあった。実際、建築に核防衛をリンクさせた消費扇動も示唆されていた。
展示は「植民地の核実験」にも触れている。
アメリカのみならずイギリスもフランスもソ連も、砂漠や草原、海洋で行った。孤立した地を選んだと言う大国は、その地の民の健康と環境、生活を破壊した。このコーナーの作品からは、我が国の被爆者のそれに似た、弱い立場の優しい人間による悲しい叫びが聞こえるようだ。