(永末アコ:フランス在住ライター)
パリの真ん中、エッフェル塔が美しく望めるセーヌ河岸に巨大な「東京宮殿」があるのをご存知でしょうか。もう20年以上にわたり、フランスのみならず、欧州の、特に若い人々に愛され続け、ますますその活動が注目を集める場所。
世界が転換期を迎えていることを肌で感じるここ数年、現在も未来も、政治家だけに任せることはできないと思う人は世界中にいます。フランスでは子供たちでさえ、ウクライナを攻撃するロシアを厳しく批判し、ロシア人を村八分にした欧米諸国の政治経済界は、なぜパレスチナ人を皆殺し状態にするイスラエルに同じ行動を起こさないの?と声を上げています。
黙っていられない市民は「今すぐガザへの攻撃をストップして!」と声高く街を練り歩きましたが、フランス政府はそのデモ行進を禁止しました。にもかかわらず、デモを続ける人道心高い人々は警察に囲い込まれて捕まり、罰金を取られるという理不尽がパリでは数週間前に起こっているのです。
隠れた理不尽は他にもあまた、すぐ目の前にあるのに私たちの意識に入らないことも多々。その真ん中で葛藤している人やかたわらで寄り添う人が、時にショッキングに、時になぞなぞを仕掛けるように、そして時に美しく、事実を形にして静かに深々と訴えることに門戸を開いているのが、この「東京宮殿」です。
その形には、しばしば難解と目を背けられてしまう「現代アート」という肩書がついているのですが、東京宮殿ではそれらがまるで思考の遊園地のように、インスタレーション、ビデオアート、パフォーマンス、音楽、絵画、写真、オブジェ、彫刻等で我々の目の前に現れます。視界360度で。