ハリス氏は「レイア姫」になれるか

 しかし今選挙において、民主党へのこれだけのセレブ女性らの支援をもってしても、世論調査の結果は投票直前まで両候補者への支持拮抗を示した。そんな中で11月2日には、俳優のハリソン・フォードさんが、ハリス氏を支持する動画を公開した*8

*8: Harrison Ford has chosen who he's endorsing for the 2024 presidential election(The Independent)

 フォードさんは男性だが、代表作である映画「スター・ウォーズ」シリーズには今回の大統領選を考えるうえで重要な女性が登場する。2016年末に亡くなった俳優のキャリー・フィッシャーさん(享年60)だ。

ハン・ソロ(右)を演じるハリソン・フォードさん(右)とレイア姫を演じるキャリー・フィッシャーさん(中央)=1977年製作の映画「スター・ウォーズ」シリーズの第1作(写真:Lucasfilm/AF Archivevans/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ)

 フィッシャーさんはスター・ウォーズにおいて、宇宙の邪悪な帝国に挑む反乱軍を率いるレイア姫を演じた。スター・ウォーズで「戦う強い女性」を演じ続けたフィッシャーさんは、亡くなるまでトランプ氏を猛烈に嫌っていたことでも知られている。

 死の翌年には「女の居場所はレジスタンスにある」というスローガンのもと、トランプ氏への「反乱」のシンボルとして、レイア姫の画像が大量に使用された*9

 フォードさんがスター・ウォーズで演じたハン・ソロとレイア姫は、帝国軍と戦う同志であり、心を通わせたパートナーであった。フォードさんの動画で、そんなレイア姫を連想する有権者もいるだろう。

*9How Carrie Fisher Became the Surprising Face of the Rebellion Against Trump(VANITYFAIR)

 女性であるレイア姫が映画の中で「ダーク・サイド」を打ち倒すべく正義の反乱軍を率いたのは1977年、実に半世紀近くも前のことだ。レイア姫は「フェミニストのヒーロー」としても知られている。

 当時、その背景に男性優位な米国社会に対するレジスタンスの意味合いが込められていかどうかは定かではない。ただ、いまだ、夫やパートナーである男性の目を気にして、自身の信条に従って投票ができない女性が米国社会に少なくないこと自体、驚きを禁じ得ない。

 自身の権利を守りたいと願う米国の女性たちは今回新たなリーダーとして、初の女性大統領を誕生させることができるだろうか。

楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。