米大統領選がいよいよ決戦の日を迎えた。ハリス・トランプ両陣営が最後まで接戦を繰り広げるなか、勝利の行方を左右しかねないのが女性票だ。ハリス氏は人工妊娠中絶容認の立場で、トランプ氏と一線を画す。そうしたなか、ハリス氏支持団体が公開した動画が物議を醸している。トランプ支持者の夫に内緒でハリス氏に投票するように呼びかけるような内容だ。背景には、米国社会における深刻な男女間の「分断」がある。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
世界が注目する米大統領選は、投票直前まで民主・共和両党への支持がほぼ拮抗状態にあると伝えられた。こうした中、民主党支持団体が制作した動画が物議を醸している。
俳優のジュリア・ロバーツ氏がナレーションを務めるこの動画では、ある女性が夫と共に投票所を訪れるシーンが描かれる。夫はトランプ支持を思わせる野球帽を被り、女性も派手な米国旗のついた帽子を被っている。
投票する女性は記入直前、別の女性と無言で視線を交わす。そして、2人は民主党ハリス候補に票を投じる。その後、片方の夫が「正しい選択をしたかい?」と尋ねると、派手な野球帽の女性は「もちろんよ、ハニー」と笑顔で応える。
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動画の最後は、一人ひとりが投じる票の秘密は守られる、という趣旨のロバーツ氏によるナレーションで締めくくられる。つまり、あからさまにそうとは言っていないものの、仮に夫がトランプ支持者であっても妻にはそれに従う義務はなく、自由意思で一票を投じられる、ということを伝えている。
今回の選挙戦では、男女の投票行動に相当なギャップが生じると予測されている。大きな争点の一つが、人工妊娠中絶の自由という、女性の体に関わる最もデリケートな問題でもあるからだ*1。
*1:The voter gender gap is growing, and Harris’ abortion rights campaign could make it even wider(POLITICO)