今回の大統領選には「男と女の戦い」の側面も

 米ワシントン・ポスト紙は、密かにハリス氏を支援する女性たちに働きかけるため、トランプ氏を支持する男性が立ち入れない女性用トイレなどに、ハリス氏支持を薦めるメモが貼り付けられた様子などを伝えている*4

*4In a bathroom stall, a simple message: Vote Harris. No one will know.(The Washington Post)

 トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選以来、米社会では人種や宗教、そして性別など、様々な側面において深刻な分断が生じてきた。共和党陣営はトランプ氏の勝利という目的のため人々の相互不信や憎悪を煽った。女性たちが自身の信条を夫から隠さなければならないという異常な事態は、こうした分断の象徴でもある。それは、トランプ陣営の言動による最も大きな負の遺産の一つとも言えるだろう。

ミシガン州の集会で支持を訴えるトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

 こうした背景から、今回の選挙は「男と女の戦い」とも位置付けられている。選挙が専門の世論調査会社は10月23日、男女の投票行動のギャップについて「男女の戦い」と指摘した上で、激戦州の1つであるミシガン州において、ハリス氏支持の割合が女性で57%、男性で40%なのに対し、トランプ氏支持の割合は女性で37%、男性で56%だったとしている。同社は10月中、激戦州7つのうち5州においてハリス氏は女性からの支持でリードし、逆にトランプ氏は男性の支持獲得に有利であった結果も伝えている*5

*5Swing State Poll 2024: Michigan, Wisconsin: Gender Divide Defines Tight Races In Rust Belt Battlegrounds, Quinnipiac University Poll Finds; U.S. Senate Races: Dem Holds Lead In MI, Very Close In WI(Quinnipiac University Poll )

 米国の人口は昨年7月時点で、15歳から44歳では男性の方が多い(注:米国の投票権は18歳以上から)。逆に45歳以上では女性の方が多い*5。米調査会社ギャラップの今年2月の報告によれば、1999年には29%だったリベラル派の若い女性の割合が、2023年には40%に増加したという。これに対し、同時期の男性のリベラル派は、わずか1%の増加であったとしている*6

*5Resident population of the United States by sex and age as of July 1, 2023(statista)
*6U.S. Women Have Become More Liberal; Men Mostly Stable(GALLUP)