すると、「同性愛者でも問題ないですよ。教えが正しく伝わるなら、キラキラするものをつけても問題はないでしょう。みんなが平等に救われることのメッセージを伝えていってほしい」と促されたことで、救われたと明かす。西村さんは修行を終えた後は、僧侶兼メイクアップアーティストとして精力的に活動している。
西村さんのように、LGBTQの僧侶は決して少なくない。しかし、多くがカミングアウトできずに「我慢して」きたと思われる。
仏教界は極めて前時代的な文化・習慣が残る世界だ。「男僧・尼僧」という性差をはっきり分けてしまう呼び方や、男僧・尼僧とで儀式のやり方が異なるケースもある。
僧侶だけではない。檀信徒の中にも多くのLGBTQが存在する。近年、各地の寺にLGBTQに関する相談が寄せられてきている。特に、「戒名」は個(故)人のアイデンティティに関わる大事な問題だ。
「ゲイやレズビアンのパートナー同士で墓に入りたい」
先の戸松さんは、シンポジウムで戒名問題にも踏み込んだ。
「お坊さんが良い戒名だと思って付けても、LGBTQの当事者はそうは思っていなかったということもあるかもしれない」
たとえば、「戸籍上女性として生まれたけれど、男性として生きてきた。だから戒名は男性につけるものにしてほしい」といったケースだ。だが、この場合、生前に住職や家族にカミングアウトすることが前提となる。
戒名だけではない。
「ゲイやレズビアンのパートナー同士で墓に入りたい」——。
先述のように日本の慣習では婚姻届を提出した男女の夫婦でなければ、イエを継承できないことが多い。一族の墓に入れるのは、イエを継承した者に限るとする規定を設けている霊園も少なくない。
法的に認められない同性愛の「夫婦」は、夫の一族墓に入ることができないのだ。