(宮崎園子:広島在住フリーランス記者)
地元紙の朝刊をめくっていたら、社会面に見出し2段の短い記事が載っていた。9月20日付中国新聞、「婚姻届 記入例見直しへ/広島市/ジェンダー・バイアス配慮」の見出し。広島市が区役所や公式ホームページなどで紹介している婚姻届の記入例を改める、というものだ。
どういうことかというと、ものすごく単純な話で、婚姻届の書面の中の「婚姻後の夫婦の氏」について、「夫の姓」「妻の姓」のどちらかを選ぶ部分で、これまでは「夫の姓」の方にチェックが入ったものを記入例として示してきたが、これを改めるという。
たかが記入例、されど記入例
19日の広島市議会で、公明党所属の市議からの一般質問に答える形で担当局長が方針を示した。
市議は、結婚に伴い強制的に夫婦が揃って同じ姓を名乗ることになっている国は日本だけであることなどについて問題提起。結婚後も職場などで旧姓を使うことができる運用が広まった一方、旧姓使用で仕事をしている女性が海外でなりすましを疑われるケースがあることなど、そもそも改姓の負担が女性に偏っていることが女性活躍を阻害する要因になっており、企業にとってもビジネス上のリスクになっているとして、民法改正による選択的夫婦別姓制度の導入を求める経団連の提言を引用した。
そして、夫の姓にチェックが入った婚姻届の記入例によって「無意識にジェンダー・バイアス(男女の役割についての固定的観念や偏見)がかかってしまうことにつながり、妻の氏の選択の余地を奪ってしまうことになりかねない」として、記入例の見直しを求めた。
これに対し、担当局長は「議員ご指摘の点も踏まえて今後速やかに見直していきたい」と返した。市区政課は、10月初旬までに窓口や公式ホームページで示している記入例をどちらにもチェックが入っていない形に差し替えた。
担当課長は「議員が指摘したことは事実としてある。無意識のジェンダー・バイアスへの配慮ができていなかったので、見直した」と説明した。