最近、ジェンダー・バイアスをテーマにした講演依頼が増えた。専門家ではないが、女性割合が極端に低い新聞社でどんな思いで働いてきたか、そして、そういう業界が担ってきた報道という領域で、いかにジェンダーの問題が見過ごされてきたかについて問題提起したところ、他の場所での依頼が舞い込むようになった。

人口流出とジェンダー・バイアス

 これもまた本欄で以前書いたが、広島県は現在3年連続で人口の転出超過が全国ワースト1位という状態にある。一般的に地方から都市部への主に若い世代の女性の人口流出の原因の一つに、ジェンダー・バイアスが存在するという指摘は国もしている。そうしたデータを示しながら語ると、みなさん真剣な表情で聞く。地域のサステナビリティのためにもきちんと考えようという意識は、間違いなく地域住民の間で高まっている。

 だが、首長の感度が低いと進むことも進まないのではないか。

「日本のあらゆる経済指標が落ちている大きな原因の一つは、人口の半分である女性が日常的な差別や不利益に苦しんでいるのを放置してきたつけ。政治は本質的な解決ではなく、表面的な『やってる感』でお茶を濁してきた結果が失われた30年だ」。前述の井田さんは指摘し、注文する。「当事者が声を上げればバッシングを受ける。地方から黙って女性が消え、高等教育を受けた層から先に都市や海外に向かっている現在の動向につながる。本質に目を向けてください」。

(写真:TOMO/Shutterstock)
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 17の目標の5項目に「ジェンダー平等を実現しよう」とうたったSDGs。そのバッジを背広につけた男性を街で多く見かけるが、そういえば広島市長が身につけるのを最近あまり見ないのは気のせいか。4選をかけた選挙戦の最中は着用していた記憶があるのだが。

 新しくなった広島市の婚姻届記入例。夫の欄だけにチェックが入った状態ではなくなった。しかし、「チェック漏れ防止のため」(区政課長)、夫の欄にチェックを入れたパターンと、妻の欄にチェックを入れたパターンの2種類を目立つように示した新しい記入例はむしろ、以前の記入例よりもハデに「とにかく夫婦は同姓に」と訴えているようで、選択的夫婦別姓制度への消極姿勢を示しているようにしか見えないのが皮肉だ。

改訂された広島市の婚姻届の記入例(広島市公式ホームページより)
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