教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、男子校で広がり始めた性教育とジェンダー教育の現場に迫る連載「ルポ・男子校の性教育」。今回は世田谷学園中学を訪ねた。制作に2年をかけたという独自のテキストが、驚くほどよくできている。大人が考える「正解」を押し付けず、中3生徒に本音でジェンダー・バイアスについて考えさせる授業の中身とは。
(おおたとしまさ:教育ジャーナリスト)
世田谷学園中学校には「総合社会」という科目がある。地理・歴史・公民を統合して、テーマ別に編成された学校独自科目である。暗記科目になりがちな社会科を変える目的で5年前につくられた。
中3の1学期には「ジェンダー」「家庭」について学ぶ。それぞれに50〜60ページのオリジナルテキストがあり、これがよくできている。オリジナルテキストを制作し、カリキュラムに落とし込むのに約2年間を費やした。
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「新しい単元に入る前に、みなさんに答えてほしいと質問とクイズがあります」と社会科教諭の猪俣慶亮(けいすけ)さんが生徒たちに呼びかける。
質問とは、性別意識を問うものだ。ぜんぶで10問。自分たちがいかに「男らしさ」「女らしさ」にとらわれているかを自覚してもらうための質問だ。
たとえば「女性が重い荷物を持っていたら、男性が代わりに持つべきである。 はい/いいえ」について、「俺だったら絶対持つよ」と猪俣さんが言うと、生徒の一人が「キモ!」っと声をあげる。生徒たちは、「これは、どうなんだ?」とそれぞれに考えているような顔をする。
社会生活を営む大人なら、どうこたえれば「正解」なのか、だいたいわかる。でも生徒たちは、「正解」を当てには行かず、あえて「本音」で答える。理由も書く。女子がいたら総スカンをくらうような意見もある。しかしそれこそが「もまれる」ための教材になる。これを記録しておいて、単元の最後に振り返り、自分たちの意識がどう変化したのかを比較する意図がある。
クイズは下記。実際にやってみてほしい。