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「オナニー」ではなく「セルフプレジャー」と呼ぶ理由とは（写真：Pixel-Shot/Shutterstock）
1993年に『男性解体新書』（大修館書店）、2014年には『男子の性教育』（大修館書店）を著し、近年では『おうち性教育はじめます』『恋愛で一番大切な“性”のはなし』（KADOKAWA）、『50歳からの性教育』（河出新書）などが話題になっている、性教育の第一人者・村瀬幸浩さんに、男子校の開成や麻布で行った性教育講座の内容について聞いた。
（おおたとしまさ：教育ジャーナリスト）
■元一橋大学・津田塾大学講師、村瀬幸浩さんに聞く（後編）
◎「僕らの知識はぜんぶ下ネタ」と麻布高校生に気づかせた性教育…第一人者が大人にも伝えたい本当の「性の悦び」
おおた：村瀬さんの性教育講座がどこかの男子校で行われるのなら取材させてもらって、その様子を拙著『男子校の性教育2.0』（中公新書ラクレ）に記述したいと思っていたのですが、タイミングが合わず、かないませんでした。
村瀬：本を読ませてもらいました。男子の性教育には強い興味がありますが、男子校の性教育についてはあまり意識したことがありませんでした。おおたさんの本を読んで、いまの男子校の先生方はこんなに頑張ってるんだと、驚き感心しました。
村瀬 幸浩（むらせ・ゆきひろ） 元一橋大学・津田塾大学講師 “人間と性”教育研究協議会会員、日本思春期学会名誉会員。私立・和光高校の保健体育教師として25年間勤務。その後25年間、一橋大学と津田塾で「セクソロジー」の講義を担当した。おおた：すべての男子校ではなくて、意識の高い先生がいる学校を取材させてもらっているという面はありますが。
村瀬：公立では活かされにくい教員の個性が活かせるのが私学ですよね。私も和光高校で25年間教えました。当時の校長から「公立ではできない教育をしろ」とずいぶん励まされました。そうでなければ「人間と性」という授業はできませんでした。
おおた：そうかもしれないですね。
村瀬：私自身は愛知県の男子校・東海に中高6年間通いましたが、当時の学校はこんな教育など何もやっていませんでした。
おおた：村瀬さんより30歳くらい下ですが、私のころも同じです。
村瀬：とはいえ一方で、男子校だからといって、マッチョな感じはまったくありませんでした。
おおた：そうですよね。
村瀬：勤めていた一橋大学のほうがマッチョな雰囲気がありましたよ。面白かったですね。私は男性に性について話したかったわけですから。一橋と津田塾のカップルが結構いるんですが、津田塾のカノジョから「村瀬のセクソロジーの授業をとれ」と言われてとったとか。私もカップルの一方だけ性に関するレベルが上がってしまうと、相手が幼く見えてしまってギクシャクしてしまうから、できるだけ学びを共有した方がいいと言っていましたね。
おおた：なるほど。
村瀬：私自身は高校生のころ評論家の倉田百三の本なんかを読んで、禁欲的な考えに強くひかれていたことがありました。人間の成長を、いかに「肉欲」から離れるか、という軸でとらえたり。
一方で、自らの中の押さえがたい欲望もあるわけです。葛藤を覚えました。もっと遡れば、家の近所に当時遊郭があり、幼いころの友だちに経営者の家の子がいて遊びに行くと、そこの女性たちとおしゃべりしたりかわいがってもらったりしました。でも彼女たちの痛みや悲しみを目撃したり身近に感じたりもしていました。その原体験が私のセクソロジーのルーツの一つと言えるかもしれません。
おおた：数年前には開成や麻布で性教育講座をされていましたよね。どんなことをお話しされるんですか？
