クラスで正解は2人、考え抜かれたジェンダークイズ

 下記の文章A〜Fを意味が通るように並べ替えてみよう。

「火災が発生」
A:数時間後、消防隊が到着し、がれきの間にいる人を救いました。
B:父親はなくなってしまいました。
C:あるとき大きな火災が起きて、道路に建物が倒れてきました。
D:たまたま歩いていた男性と、彼の娘は建物のしたじきになってしまいました。
E:消防士は「なんでここに私の娘が!」と悲鳴をあげました。
F:彼の娘は、がれきの間にはさまれ、重傷を負いました。

 これがジェンダー・バイアスに関連する問題であることを意識していれば、難しくはないだろう。答えは、C→D→B→F→A→Eである。でも「いまざーっとみんなの解答を見てみたら、このクラスで正解は2人だけでした」と猪俣さん。

 消防士は男性に違いないと思い込んでいると、つじつまが合わなくなるのだ。同性婚が認められている海外が舞台であれば、男性同士のカップルという想定もできる。

約2年間を費やして制作した「総合社会」のオリジナルの教科書(写真:筆者撮影)

 という導入のあと、「ジェンダー」と「セックス」の違いについて扱う。「セックス」が生物学的な性別であることに対して、「ジェンダー」は社会的・心理的につくられる性的役割分担のことで、いわゆる「男らしさ」や「女らしさ」に結びつけられる概念であることを説明する。

「というわけで、これからジェンダーについて学んでいきます。総合社会のなかで、僕がいちばん好きな単元です」と言いながら、猪俣さんはテキストを配布する。ここまでで1コマ。