生徒が「鉄道の自動運転」で50分講義

 猪俣さんの授業では、冒頭に毎回1人の生徒が最近気になるニュースを紹介するコーナーを設けている。この日、そのコーナーを担当した生徒は「授業をまるまるつぶす気で準備してきたんで、よろしくお願いします」と教壇に上がった。

 鉄道の自動運転に関するニュースを紹介した。その技術のしくみ、意味、何が可能になるのか、何が懸念点なのかなどをわかりやすく説明する。時折「なんでだと思う?」などと問いを投げかけ、みんなの注意をうまく引く。教室が一つになり、発言が発言を誘発するサイクルが生まれ、話題がどんどん膨らむ。話はリニアモーターカーの工事のしくみやその是非までにおよんだ。

登下校時は校門で一礼するのが世田谷学園の作法(写真:筆者撮影)

 20分ほどだったところで猪俣さんが私に耳打ちする。「これ、止めるわけにもいかないんで、もしかしたら、このまま本当に行っちゃうかもしれません。せっかくお越しいただいたのに、すみません」。「いえいえ、これは止めちゃダメですよ。彼、すごいですね。このまま行っちゃいましょう!」と私は答えた。本当に50分間、そのまま生徒が喋り続けた。見事な「授業」だった。

 日を改めて、4コマ目の授業を見学した。上野千鶴子さんのスピーチを見てからちょっと日にちが空いてしまったが、書き起こした文章を読みながら、上野さんが何を問題提起しているのかを挙げていく。