上野千鶴子さんの東大入学式祝辞を題材に

 2コマ目の冒頭には、学校においてジェンダーを意識させている場面を生徒たちに尋ねる。制服、出席簿、選択科目による男女の偏りなどがあげられる。「SDGs」「この授業」「男子校」という意見もあった。「昔は、男子は家庭科やらなかったんだよ」と猪俣さんが言うと、「えーっ!」「やばっ!」というどよめきが起きた。

 ある高校で実施された、男子と女子が制服を入れ替えて登校する試みも報道写真つきで紹介された。生徒のなかから、「これ、やりたくないのにやらされるのは人権問題だと思う」という声が即座にあがる。

 まさにこれから扱うジェンダーの問題の本質に迫る発言である。やりたくないことを、「女性だから」という理由で押しつけられることがある。最近では男子校でも、「男らしさ」の押しつけには抵抗を示す生徒も多い。

 実体験を織り交ぜながら、日常に潜むジェンダー・バイアスの事例に一通り触れたのち、猪俣さんはある女性の写真をスクリーンに映し出す。

「この方ご存じですか?」

「存じ上げません」

「上野千鶴子さんという方です」

 東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子さんである。

「2ページ目を開いてください。そこから4ページにわたって、このひとが2019年に東大の入学式で行ったスピーチの全文が掲載されています。これが結構有名なスピーチなんです。ジェンダーについて語ったものです。実際の映像があるので、文字を追いながらでもいいので、それをご覧ください」

◎授業で視聴した動画はこちら(15分程度、TBS NEWS DIG Powered by JNN)

 動画を見たところで2コマ目は終了。次の授業でスピーチの中身について話し合うというので、3コマ目も見学することにした。が、そこで思いがけないことが起こった。