東大のサークルに「東大女子」が入れない理由

(1)大学において、医学部の男性の合格率が高い。
 これにちなんで、各大学の女性比率や学部別の男女比率などのデータも見せる。不自然な偏りがあることがわかる。

(2)東大の女子学生の入学者が2割を超えない。
 東大の総長には過去一人も女性がおらず、そもそも女性の教授の比率がとても少ないことを伝える。東大だけでなく、一般企業でも女性の役員比率がとても低いことをデータで示す。

(3)四年制大学進学率は、男性に比べて女性が低い。
「息子は四年制、娘は短大でいい」というような親による性差別もあることを指摘する。「ズルい!」という声があがる。

(4)東大に進学した女性は大学名を言うのに躊躇する傾向にある。
 男性には学歴が求められるのに、女性の場合むしろ「かわいい≒男性に守ってもらえる、男性を脅かさない」ことを求められる傾向があることを指摘する。

(5)東大女子が入れず、他大学の女子しか入れないサークルがある。
「なんで東大女子は入れないんでしょうね?」と猪俣さんは問いかける。

 上野さんの指摘を、構造的に理解できた生徒はおそらくまだ少ないのではないかと思う。しかし、ジェンダーの単元の最後に、再びこのスピーチを読んで、自分の理解度がどれだけ深まったかをチェックする意図がある。

「まとめるとですね……」と言って猪俣さんは、「恵まれた能力をもっていても、恵まれた環境に身を置けない人たちがいる」と書かれたスライドを映写し、その大きな要因の一つがジェンダーだと訴える。

 さらに、性的な嫌がらせや性差別を経験した女子が62%いること、日本のジェンダー・ギャップ指数が153カ国中125位であること(2020年)、四年制大学への進学率は男子56.31%、女子50.14%と差があることをデータで示してこの日の授業が終わった。 

「ジェンダー」の単元ではたとえば宗教や歴史の視点からもジェンダーを学ぶ(写真:筆者撮影)

 テキストの先を読むと、これが非常に良くできている。日本史の観点からも世界史の観点からも地理の観点からも公民の観点からも、ジェンダーに関するところが抜き出され、横串が通されている。