(4)核兵器製造の決断

 英国のロイター通信社は2024年10月11日、米国のバイデン政権高官と国家情報長官室(ODNI)報道官は、イランは依然として核兵器の製造を決断していないとみられると述べたと報じた。

 また、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官も、イランの最高指導者ハメネイ師が2003年に決定した核兵器開発計画の停止を撤回した形跡はないと述べたと報じた。

(5)筆者コメント

 2023年3月1日、米国のコリン・カール国防次官は、イランは「12日間ほどで核爆弾1個分の核分裂性物質を製造できる」との分析を明らかにした。

 カール氏は同年2月28日の下院軍事委員会の公聴会で「イランの核開発は異例の進展を見せている」と証言。

 トランプ前政権がイラン核合意から離脱した2018年には核爆弾1個分の核分裂性物質を製造するのに1年かかっていたと指摘し、急速に進む核開発を早急に止める必要性を訴えた。

 また、国務省のネッド・プライス報道官は2023年3月1日の記者会見で「イランが核兵器を保有することはない。米国が許さない」と強調した。

 イラン核合意を検証するIAEAは2023年2月28日、イラン中部の施設で、濃縮度が核兵器級の90%に近い83.7%のウラン粒子を検知したとする報告書をまとめている。

 イランの核兵器製造能力であるが、1980年代後半に北朝鮮がイランへミサイル技術を提供してきた。また、技術者の往来やミサイル関連部品の提供も伝えられている。

 以来、イランは北朝鮮のミサイル技術に依存し、また北朝鮮は外貨獲得手段として、両国の協力関係が構築されてきた。

 イランの北朝鮮からの輸入事例は次の通りである。

▲1987年頃:北朝鮮、「スカッドB」ミサイルをイランへ提供

▲1988年頃:イラン、「シャハブ1」ミサイル開発

▲1990年頃:北朝鮮、「スカッドC」をイランへ提供

▲1994年頃:北朝鮮、「ノドン」ミサイルおよび関連部品を提供

 イランは北朝鮮のノドンミサイルをベースに「シャハブ3」ミサイルを1998年に開発した。

 シャハブ3は、1段式の液体燃料ロケットで、全長16メートル、射程は1300~1700キロ、760~1000キロのペイロード重量をもつと考えられている。

 改良型の最大射程は約2000キロに達すると見られる。10月1日のイスラエル攻撃にも用いられたとされる。

 さて、兵器化にとって最も難しい弾頭の小型化であるが、北朝鮮は核兵器の小型化・弾頭化を実現し、これを弾道ミサイルに搭載する能力を既に保有しているとみられている。

 この技術がイランに提供されていると考えれば、イランが核兵器製造を決断すれば、完成するまでに要する時間は、筆者の個人的な推測であるが1年、長くても2年というところであろう。

 米国は「イランが核兵器を保有することはない。米国が許さない」と言うが、北朝鮮の非核化に失敗したことは厳然たる事実である。

 同じ轍を踏まぬよう米国には頑張ってもらいたい。日本も米国を支援するために何ができるかを真剣に考えるべきであろう。