景気回復のための財政支出が打ち出せないドイツ

 ドイツ連邦経済・気候変動省は10月7日に最新の経済見通しを発表、2024年の実質GDP(国内総生産)成長率を従来の0.3%増から0.2%減に引き下げている。2023年は0.3%減であったから、ドイツ経済は2年連続でのマイナス成長になる。

 続く2025年の成長率は1.1%増と3年振りのプラス成長になると、連邦経済・気候変動省は見通している。欧州中銀(ECB)による利下げで個人消費や設備投資に弾みがつくというのがその主な理由だ。

 確かにECBによる利下げはドイツの内需を刺激するだろうが、かといってドイツ経済が2025年に本当にプラス成長に転じるかは微妙なところだ。

 日本ではフォルクスワーゲン社(VW)によるドイツ国内の工場のリストラが話題となっているが、ドイツ国内でリストラを予定している会社はVW社以外にも数多く、ドイツの雇用・所得情勢は今後、一段と悪化することになる。雇用・所得情勢が悪化すれば、ECBによる利下げが進んだところでドイツの内需の復調は限定的だ。

 最大の懸念材料は、財政支出の抑制にある。

 ショルツ政権はコロナショック時の景気回復のために設けた予算外基金の残余分を流用することで、2022年まで財政赤字をカバーしてきた。しかし、こうした運用は違憲だとドイツ憲法裁が2023年11月に判断したことで、ショルツ政権は2024年より財政緊縮に努めざるをえなくなっている。

 弱含む内需を財政支出で支えたいところだが、ドイツにはそれができない。一方で外需、つまり輸出にもあまり期待ができない。

 確かに、ECBによる利下げでユーロ安が進み、輸出には追い風が吹くと考えられる。しかし人件費や原材料費の高騰でそもそもの輸出競争力が低下したままだし、最大の輸出先である中国の景気も低迷が続いている。

 要するに、ドイツの景気は非常に悪い。ゆえに賃上げをする環境にはないわけだが、労働界は企業に対して過酷な要求を突きつける。