それでも賃上げを要求する労働界

 例えば、ドイツ最大の労組であるIGメタルは10月15日、進行中の金属・電気産業における団体交渉で、雇用主側が提示した3.6%の賃上げ案を拒否すると発表した。IGメタルは7%の賃上げを要求している。

 10月末の労使交渉が決裂した場合、IGメタルはストライキを行うと示唆している。とはいえ雇用主側としても、ない袖は振れない。

 そればかりではなく、IGメタルは、いわゆるワークシェアリングではなく、給与水準を据え置いたままの週休3日制の導入にも野心的である。これは実質的な大幅賃上げに相当するため、雇用主側も慎重である。

 ミュンスター大学の研究チームは、同大学が主導する社会実験では、週休3日制を試験導入した企業の7割に、生産性の向上が見込めたと10月下旬に明らかにしている。ただ、週休3日制で生産性が改善するとしても、それは業種が限定されよう。どのみち、賃金も休暇も増やせという要求が実現するほどドイツの景気は良くはないのである。

 本来ならば政界が、労働界と経済界の調整役を担うべきである。しかしながら、IGメタルはショルツ首相を擁する与党SPDの最大のスポンサーであるから、ショルツ政権は事態の収拾に乗り出せずにいる。むしろレームダック化が進んだショルツ政権は、次期総選挙での敗北を軽減させる観点から、労働界寄りの立場を強めているともいえる。