マクロン大統領の起死回生の電撃解散は不発に終わり、左派と中道、右派でほぼ均等に三分化されたフランス議会。マクロン大統領の任期が終わる2027年5月まで政治的に漂流する可能性が高いが、経済面での構造改革がどうなったのだろうか。マクロン大統領とフランスの2024年を振り返る。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
「策士策に溺れる」ということわざがあるが、それを体現したのはフランスのエマニュエル・マクロン大統領その人だろう。
2024年6月初旬に実施された欧州議会選の結果、自らが影響力を持つ中道会派の退潮と右派の躍進が明らかとなると、マクロン大統領は下院(国民議会)を電撃的に解散し、総選挙に打って出た。これが完全に裏目に出た。
フランスでは、マリーヌ・ル・ペン氏が率いる右派政党・国民連合が支持を集めている。一方で、フランスにはそうした右派の躍進を好まない有権者も数多い。そうした有権者を取り込み、自らの支持基盤を固めようとしたマクロン大統領だったが、その目論見は見事に外れ、国民議会の構図は、左派と中道、右派でほぼ均等に三分化されてしまった。
マクロン大統領は巧妙に立ち回ろうとし過ぎたのだ。
国民議会選で協力を仰いだ左派連合から首相を選出せず、かつての中道右派の名門政党である共和党出身のミシェル・バルニエ元欧州委員会委員を任命した。右派の国民連合への配慮からだったが、結局、バルニエ内閣は、次年度予算を巡る与野党間の対立を受け、発足から2カ月で崩壊してしまう。
有権者のマクロン大統領に対する評価も厳しさを増しており、辞任もやむなしというムードが強まっている。
2017年5月に大統領に就任した際、1977年生まれの若き指導者は、文字通りの新しい風をフランスに持ち込むかと内外の期待を集めていた。事実、就任当初のマクロン大統領は実に精力的だったが、今やその面影は全く失われている。
このように政治面では著しい混乱をフランスにもたらしたマクロン大統領であるが、経済政策面では、そもそもは構造改革、特に労働市場の弾力化や企業活動の活性化を公約に掲げていた。それでは、そうした構造改革はフランス経済の体質改善につながったのだろうか。いくつかの指標を用いて、その成否を確かめてみることにしたい。