いずれにせよ円安は堅いか

 こうして見ると、総選挙のコンセンサスは「自民党・公明党が過半数維持」であるものの、この想定を少しでも上回るないし下回るような結果では市場が安心することはなく、資産価格の落ち着きどころが非常に不安定になりそうである。

 ただ、こと為替市場において円高が起きるシナリオは、自民党が単独過半数を獲得した上で、「石破カラー」であるタカ派的な金融政策観を実現できる場合に限られそうだ。その意味で、今回の総選挙は円相場の続落を警戒するイベントと筆者は考えている。

 その際の株式市場の反応は一義的には株高で良いと考えるものの、日本売りの意味合いもあって円が売られる中で果たしてどこまで株高が期待できるのか。何より債券市場でも売り(金利上昇)が先行してしまえば株高はついてこないだろう。

 メインシナリオであろうと、リスクシナリオであろうと、トリプル安への懸念が根絶されない怖さは残っている。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年10月21日時点の分析です

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。