金融市場の反応<リスクシナリオ>

 もっとも、上記は与党が設定する勝敗ラインをクリアした上での出来事であるため、リスクシナリオではない。リスクシナリオはそれすらクリアできなかった場合、すなわち「自民党・公明党(与党)でも過半数割れ」となった場合だ。

 党内の反対勢力を押し切って石破首相は裏金問題に絡んだ議員を非公認としたが、現状の世論調査を見る限り、国民は納得していないのだろう。とすれば、可能性は高くないとはいえ、「絶対にない」とも言えないのが与党過半数割れのリスクシナリオである。

 厳密には大きく過半数割れなのか、辛うじて過半数割れなのかという「負け方」でも類別できるが、いずれにせよ日本の政局流動化を決定づける結果でもあるため、「負け方」はどうあれトリプル安は警戒したい。

 もちろん、「辛うじて過半数割れ」であれば非公認候補の追加公認という形で乗り切る可能性もあるし、そうなれば形式的に現行の政権枠組みは不変ということにもなる。しかし、その世間的なイメージはかなり悪いものになってしまうだろう。

 もしくは、追加公認ではなく一部野党(例えば、国民民主党など)を取り込むという選択もあるかもしれない。その場合の財政・金融政策は一段の左傾化が懸念されるようになる。それ自体は、やはり円安を招くのではないか。

 その際に「円安だから株高になる」と言っていられる状況なのか。そもそも株高は「制御不能なインフレの賜物」というネガティブな側面もあるため、その可能性もないわけではないが、日本政局の不安定化が定着するという不安の中で株安が進むという可能性は相応に高いのではないか。

 左傾化ゆえに緩和の継続、すなわち債券高(金利低下)を予想することも可能だが、この期に及んで加速する拡張財政路線をそこまで楽観的に評価するのは無理筋に思える。自公過半数割れはトリプル安という想定を持っておきたい。