ひどい人が賞をもらい、もてはやされる映像業界の現実

──西山さんは、ICと並行してテレビ番組などの海外ロケ・コーディネーター(※)をされています。ICとロケ・コーディネーターの2つの仕事を通して見えてくる、日本の映像業界の問題について教えてください。

※海外ロケ・コーディネーターとは、海外の取材先について調査したり、取材の許可を取ったり、撮影時に同行して通訳しながら撮影隊をガイドしたりする仕事。

西山:私が一番問題だと思うのは、「良いものを作っている、面白いものを作っている、だから勝利」というメンタルです。もちろん、面白いものを作るのが正義、売れてこそ、見られてこそ、という理屈はよく分かります。

 でも、そこにどんな過程があれ、面白かったらいいというのは違うと思います。「あの監督は繊細で気難しいけれど、すごく良いものを作るからしょうがないよ」と、成功者の横暴が許され続けてきたこの業界の文化が本当に嫌です。

 セクハラもパワハラもあって、「でもあの人面白いもの作るから仕方ない」という感覚が問題であることはずっと言ってきました。「キャラが強ければ強いだけいい」みたいな感覚がこの世界にはずっとあります。

 もちろん、そうした過程の中の問題は視聴者には見えないから、才能だけに光が当たるのはしょうがないことではありますが、その陰でいろんな人が犠牲になってきました。ひどいことをしている人が、作品が当たり、賞をもらい、もてはやされているのを見ると「これってどうにかならないかなぁ」と、いつも内心思います。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。