会社からの帰宅途中に起こった突然の事故

 多恵子さんから初めてメールをいただいたのは、2023年5月14日のことでした。そこには、どうすることもできない悲しみが綴られていました。

『主人が突然亡くなってから今日で3か月、未だに、どうしていないのと、何度も問いかけている自分がいます。もちろん、返事など返ってくることはありません。でも、あの日主人は、意識を失いながら何を考えていたのだろう、最後に何を言いたかったのだろう、どんな思いで亡くなったのだろうと考えると、本当に辛くて仕方ありません』

事故で亡くなった夫の佐々木一匡さん(遺族提供)
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 事故が起こったのは2023年2月14日、午後9時35分ごろのことでした。その夜、アルバイトの石田颯太被告(当時20)は、乗用車(トヨタ・クラウン)で宇都宮市下栗町の新4号国道を走行中、前を走っていた会社員・佐々木一匡さん(63)のスクーターに追突したのです。

事故現場での再検証の様子(遺族提供)
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 仕事を終えて帰宅途中だった一匡さんは、多発外傷と胸部大動脈損傷を負い、およそ1時間後に死亡。石田被告は、事故から約1時間後、過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕されました。

 3月7日、検察は石田被告を過失運転致死で起訴。4月には早くも刑事裁判が始まりました。しかし、事故の真実が少しずつ明らかになるにつれ、多恵子さんは、『この事故が“過失”で裁かれていいのだろうか、このまま黙っていてはいけないのではないか……』そう思うようになったといいます。