「県職員が2人亡くなったというけど、元県民局長の自殺の原因は懲戒処分への抗議ではなく、百条委で私的な情報が出されることへの抗議だった。阪神・オリックスのパレード担当課長も、県庁内ではなく、外部との調整で疲弊したと聞いている。だから、斎藤の行為が直接の原因ではないということや。百条委の調査もまだ終わってない。それなのに辞任への流れが性急に作られ、『県政が停滞』と言われたら自分も賛成せざるを得なかった。後押ししたマスコミの責任も大きいと思うで」

最大会派・自民はいまだ候補者絞れず迷走

 斎藤への未練を残すこうした声もある中、維新県議団は2日、清水貴之・参院議員(兵庫選挙区)に出馬を要請した。清水は次期衆院選で、公明党が議席を持つ兵庫8区への鞍替えを予定していたが、「兵庫県を何とかしたい」と出馬の意向だ。

 一方の自民は迷走している。3日の県議団総会で、独自候補擁立や他党との一本化を断念し、自主投票とすることをいったんは決定した。現職・元職を含めて官僚や県幹部らに打診して軒並み断られ、支援要請のあった元経済産業省官僚の中村稔──灘中高出身で、兵庫県庁への出向経験もある——との面談も行ったが、県議団の意見がまとまらなかったからだ。

 ところが4日には一転。国会議員からの意見で“不戦敗”を撤回し、候補者探しを続けることになった。最大会派の自民は、百条委の設置、辞職申し入れ、そして不信任決議と、文書問題における斎藤の責任追及を主導してきた。「代わりの候補者を示さず、知事を辞職させただけでは、あまりに無責任だ」という声が党内に根強い。

 自民県議団には、先述した斎藤に未練を残す議員、中村を推す議員のほか、出馬意向を示している稲村和美・前尼崎市長を推す声もある。兵庫県議を2期7年、尼崎市長を3期12年務めた稲村は、一貫して政党に属さない「市民派」で通し、今回も市民が設立した政治団体から要請を受けて立候補する予定だ。