出直し選挙に向けて公約を発表する斎藤氏(10月23日)

 兵庫県知事選が10月31日、告示された。パワハラなどの疑惑で県議会から全会一致で不信任決議を受け失職した斎藤元彦氏のほか無所属新人6人が立候補し、計7人による選挙戦が繰り広げられている。強烈な逆風下で再選を目指す斎藤氏だが、SNSや街頭では擁護の声も広がる。駅前に立って県民に語りかける斎藤氏の応援に駆けつける人も増えている。

「絶対に負けるわけにはいかない」——。支持者に強い言葉で訴えかける斎藤氏は、自身の知事としての資質についてどう考えているのか。本人を直撃した。(以下、文中敬称略)

(松本 創:ノンフィクションライター)

「マスコミや県議会には負けない」、第一声に沸く聴衆

 出直し選挙に臨んだ斎藤元彦・前兵庫県知事の第一声で約300人の聴衆が最も沸いたのは、こんな発言だった。

「メディアの報道に負けるな。そういった声もいただきました。今回、県議会側からの不信任決議、そしていろんな政党・政治家が斎藤元彦にさせるわけにはいかない、そんな強い声もいただいてます。斎藤か、斎藤以外か。私は絶対それには負けるわけにはいかないんです」

 マスコミや県議会には絶対負けない──。はっきりと「敵」を名指しした。

 自民県議団が割れて保守分裂選挙となった3年前も、告発文書問題で記者や県議から追及され続けた半年間も、県議会の全86人から不信任を突き付けられた時も、口にすることはなかった強い表現である。

 斎藤自身の心境という以上に、支持者たちの思いに呼応する言葉のように私は感じた。失職直後の前回記事(「なぜあなたは斎藤元彦・兵庫県知事を支持するのか?」失職した斎藤氏を応援する人に聞いた)から約1カ月の間に斎藤の駅立ちへの応援は日に日に増え、握手やサインを求めたり、一緒に写真を撮ったりする人は、時に100人以上になった。

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告示日である10月31日、斎藤氏の第一声を聞くために多くの県民が駆けつけた

 そして、集まる人たちの多くが県議会・県庁と、何よりもマスコミに反感を抱いていた。改革に抵抗する既得権益とマスコミの一方的なバッシング報道によって、斎藤は知事の座を追われたとする見方だ。

「真実がデマに負けるのが許せなかった」

 告示3日前、JR元町駅で話を聞いた男性は言った。斎藤支持者の間では「五条祐介」というXのアカウント名で知られる彼は明石市在住の65歳、自営業だという。駅立ちで出会った5、6人の仲間とLINEグループ「チームさいとう」を運営している。登録者は11月に入って2000人を超え、街宣活動の告知など重要なツールとなっている。

「パワハラといっても、明確な証拠は出てこない。付箋を一枚投げたのがパワハラですか? おねだりだって、贈った側からほぼ否定されている。単なる怪文書だったものが、斎藤さんに反発する井戸(敏三元知事)派の県職員やОB、県議たちが騒いだことで告発文書になった。マスコミはこれに乗ったんです。善悪の二項対立を作り、悪者を徹底的に叩くとウケるからです」