石破氏に送ったショートメール

 雇用者報酬は18兆円超のプラスだが、可処分所得は2兆円超のマイナス。物価高で家計最終消費支出は約34兆円増え、経常税(支払い)・純社会負担(支払い)は約12兆円の増。おまけに貯蓄は36兆円超も減っているのだ。

 つまり分配面を見ると家計部門は「増収減益」になっている、と吉崎氏は指摘する。生活が苦しくなっている時に裏金事件が起きた。国民の金銭感覚がシビアなっている時、無税かつルール違反のカネを受け取っている特権階級がいることを知ってしまった。

 岸田内閣の支持率は低空飛行を続け、自ら選んだ日銀総裁が円安抑止利上げに走り、株価の大暴落を招いた。岸田総理の最大の後ろ盾であったバイデン米大統領も選挙撤退を表明。「今が潮時」と総理は考えたのだろう。こうした事実を石破総理がどう捉えるのか。

 石破氏は総裁選に勝利した直後の記者会見で経済オンチぶりを発揮してしまった。日本経済の現状を問われ、「デフレスパイラル」という言葉を3回繰り返したのである。これは継続的な物価下落が引き起こす恐慌のこと。企業収益が史上最高で、人手不足が深刻な日本で起きているのは恐慌ではない。

 私は即座に石破氏の携帯にショートメールを送り、日本経済は「デフレスパイラルからの脱却」を目指すのではなく、慢性的な「デフレギャップ(需要不足)からの脱却」を目指すと言うべきことを伝えた。翌日から「デフレからの脱却」という言葉を使うようになった。読書好きの石破氏も経済書はあまり読まないのかも知れない。

 福田康夫内閣で、渡辺喜美氏は金融担当相・行政改革担当相を、石破茂氏は防衛相を務めた=2007年09月26日(写真:共同通信社)福田康夫内閣で、渡辺喜美氏は金融担当相・行政改革担当相を、石破茂氏は防衛相を務めた=2007年09月26日(写真:共同通信社)
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 石破氏の党・内閣人事は高市氏や小林鷹之元経済安保大臣が提示されたポストを拒否したことにより、適材適所もあるのに典型的論功行賞人事と批判を受けている。初入閣が多く、結果を出すには10月27日の投開票で自公政権が維持されれば、という条件付きになった。国会論戦を経た上で解散と言っていたはずなのに最短コースを選択したのは、印象として非常に悪い。

 立憲民主党が野田佳彦代表となり、「穏健保守」で基本的に緊縮財政指向の似たもの同士なので、高市支持派からは「惑星直列」と揶揄されている。