「勇気とまごころをもって真実を語れ」は消費税創設を巡る言葉

 今のところ加藤勝信氏を財務相に起用し、デフレ脱却の財政出動は石破総理も否定していないので、自民党が分裂することはなかろう。ただ総選挙の結果次第では大連立や自民分裂もありうるのではなかろうか。

 例えば、デフレ色を強めつつある中国が「軍事ケインズ主義」の誘惑にかられた時や、アメリカ大統領選が終わっても「アメリカの敵はアメリカ」の状態が続く時、あるいは両方同時に起きる時、米国経済がハードランディングに陥る時などが考えられる。

 危機対応の中で次の未来が作られることはよくある。良し悪しは別だが、昭和15年(1940年)戦時体制下の大増税(源泉所得税)や大政翼賛会などは典型例だ。

 石破氏がよく使う私の父渡辺美智雄の「ミッチー語録」の一つ「勇気とまごころをもって真実を語れ」は、主に消費税創設を巡って言っていた言葉である。

 ただ、ミッチーは単なる緊縮財政派ではなかった。消費税導入の前に政調会長として所得税減税をやったし、消費税の直後に始まった日銀の公定歩合引き上げ(利上げ)には猛反対していた。

 平成4年(1992年)に金融危機が起きた時には積極財政派の急先鋒になっていた。また、税理士でもあったミッチーは国の会計制度を「大福帳会計」と呼んでいた。つまり、単式簿記で複式簿記ならある貸借対照表(B/S)がないことを批判。今なら国家財政のB/Sは公開されており、ネットの債務は200%超どころか、その半分にも満たないのが常識に反する「不都合な真実」である。