愛娘の命を奪った車がいまも存在している事実、耐えられぬ遺族感情

 母親の喜美江さんは語ります。

「警察や検察には『事故を起こした車は廃車にした』と供述し、刑事裁判では反省の弁を述べながら、実際には早々に事故車を売却、この行為は、Aと会社が、瞳の命を粗末にしたのと同じだと感じています。私たちはいまもあの車がどこかで走っているかもしれないと思うと、つらいのです。しかもAは、自動車業界に身を置く人間です。その職責からしても今回の死亡事故のみならず、瞳の命を奪った車をA自身が勤める大手ディーラーを通して転売したという行為は、とても許されないことだと思っています」

2024年9月、福島から滋賀の事故現場へ行き、手を合わせる母親の喜美江さん(遺族提供)
拡大画像表示

 ある中古車販売店の店主は言います。

「うちの店では、死亡事故を起こしたことが明らかな車は、たとえ新しくても、損傷が小さくても、基本的には流通させずスクラップに回しています。仮に転売する場合でも、やはり不動産と同様、道義的にはその事実をお客様に伝え、了承していただくべきだと思いますね」

 日々発生している人身事故。多くの事故車が中古車市場に流れている一方、「人の死」が絡んだ車のその後をめぐり、やりきれない思いを抱き続け、深く心を傷つけられている人たちが存在することもまた事実なのです。