以下、一部抜粋します。

『被告人は(中略)制限速度を30kmも超過する時速約70kmで走行した上、前方への安全確認を怠り本件事故を起こしたもので、その運転態様は危険で、過失の程度は大きい。また被告人は、自動車販売店の店長という立場にありながら、このような自動車運転上の基本的な注意義務を怠っており、この点も強い非難に値する』(林奈桜裁判官)

 その上で、『被告人なりに贖罪につとめている』という理由を挙げ、禁錮3年執行猶予5年を言い渡したのでした。

スクラップになったわけではなかった事故を起こした車

 刑事裁判の一審判決が確定した後、坂本さん夫妻はAと会社を相手取り、民事裁判を起こすことにしました。ところが、その準備の中で、「廃車=スクラップ」にされたとばかり思い込んでいた事故車が、今も存在していることが発覚したのです。

 坂本さんの代理人として本件訴訟に取り組んだ中隆志弁護士は語ります。

「交通事故の民事裁判を起こす場合、運行供用者責任を挙げる必要があるため、まず加害車の『登録事項証明書 現在記録』を取って確認しました。この書面には車の新規登録、移転、一時抹消、変更登録等の履歴のほか、所有者名、使用者名がすべて記録されているのですが、よく見ると、事故から2カ月もたっていない2020年5月1日に一時抹消登録という手続きがなされ、Aが起訴される前の同年9月9日には、大阪で新規登録されていたことが分かりました。つまり、事故車は第三者に転売されていたのです」