「事故車はおそらく修理したのでしょう。すでにスクラップにされたものだと思っていたご遺族からしてみれば、娘さんの命を奪われた車が商品として販売され、現在も誰かが所有しているというのですから、心情的には非常に辛いものがあると思います。これは購入する側も同じではないでしょうか。たとえば私が購入した中古車が、もし死亡事故歴のある車だったら、やはり乗りたくはありませんね」(中弁護士)

両親は瞳さんが亡くなるまで住んでいたアパートの部屋を福島の自宅の一室に再現している(筆者撮影)
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裁判で減刑理由になりうる「廃車」

 実は、死亡事故を起こした加害者が事故車を「廃車」にすることは、刑事裁判決において、執行猶予、つまり減刑理由のひとつにされることがあります。

 2024年3月、福島県鏡石町の駅前ロータリーで車が暴走し、自動車学校での教習を終えたばかりの大学生2名が死傷した事故では、被告の女性(72)に対して禁錮2年、執行猶予5年の判決が言い渡されました。裁判官は判決文の中で、「被告が事実を認めて被害者らに謝罪を述べるとともに、今後は運転しないと誓約して所有していた自動車を処分している」と記していました。

(外部リンク)鏡石町大学生2人死傷事故 被告に執行猶予つきの有罪判決|NHK 福島県のニュース

 また、鏡石町の事故の被告は、事故を起こした軽自動車とは別にもう1台軽トラックを所有していましたが、2台とも廃車(解体処分)にしたといいます。

(外部リンク)鏡石駅前の惨劇【暴走車死傷事故】ふくしまの事件簿#3 (政経東北)