チェックなきレトリックに頭抱えるMAGA

 確かに9月10日のハリス氏とのテレビ討論会での「ハイチ人移民は犬、猫を食べる」発言以降、トランプ氏の支離滅裂さは際立っている。

 国立墓地の撮影が禁止されている地域で記念写真を撮ったり、「ハリス氏を『共産主義者』だ」と決めつけたり・・・。

しかもその理由は何万人の不法移民を入国させたからだと断定)

 数百万人のフォロワーを誇る人気歌手、テイラー・スウィフトが「ハリス支持」を公言したのを知り、「I hate Taylor Swift」とSNSに投稿したり・・・。

黙っていればいいものを余計に敵を作ってしまった)

 常識では考えられないことばかり。

 そばにまともなスピーチライターやアドバイザーがいれば、これほどひどい発言はしないだろう(ハリス氏が提案した2回目のテレビ討論会を蹴ったのも分かるような気がする)。

 前述のワシントン・ポストの記者たちはトランプ陣営の幹部が吐き捨てるようにこう言っていたと報じている。

「今のトランプは、もはやトランプではない。今や、チェック機能なきトランプだ。もはや誰もトランプをコントロールできない」

 こうした状況の中でトランピニズムの奥義を取得し、一つのイデオロギーとして理論づけてきたMAGA政策集団は、この大統領選でどう動こうとしているのか。

 雑誌系サイト「サロン」の著名なコラムニスト、ヘザー・ディグビー・パートン氏は、こう見ている。

「MAGAはトランプ氏よりもパワフルに進化している。トランプ氏にとっては大きな脅威にすらなっている」

「自分たちの主張を副大統領候補のJ・D・バンス上院議員(オハイオ州選出)を通して発信しているのだ」

「共和党綱領にした『プロジェト2025』をトランプ氏に受け容れさせようとしたがうまくいかず、今やバンス氏を通じて『MAGAの象徴』、超保守主義の主柱にしようとしている」

 一般的には、バンス氏はバンス氏で失言を繰り返し、トランプ氏の足を引っ張っているといった見方が有力だが、パートン氏はそうは見ていない。

 おそらく大統領選後の共和党の将来を見据えた論考と言えるかもしれない。

salon.com/may-need-to-ditch-donald-to-save-maga/