実は米国ではない、世界最大のデジタル黒字大国

 巷説で散見される「そもそもデジタル黒字は米国だけ」「どうせ米国独り勝ちであり、日本だけ負けているわけではない」といった敗北主義のような考え方にとって、最も反証的な事例がアイルランドだ。

 デジタル関連収支としての純度が高いであろうクラウドサービスへの支払いなどを含む通信・コンピューター・情報サービスに限れば、世界最大の黒字国はアイルランドで+1956億ドル、これは2位の英国(+287億ドル)の6.8倍、6位の米国(+96億ドル)の20倍だ。

 そもそも1位が米国ではないことすら、多くの論者にとって意外な話だろう(図表②)。

【図表②】

主要国の通信・コンピューター・情報サービスに関わる収支
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 一方、日本、そしてドイツはこの分野ではやはり赤字が大きい。上述したように、ドイツのデジタル関連収支は統計の制約上、黒字という処理になってしまうが、より狭義の統計を掘り下げれば実態は異なる。

 もちろん、いくら統計上のアイルランドがデジタル黒字大国とはいっても「最終的な利益は米国籍の企業に帰属する」という実情は否めず、その意味で「米国の独り勝ち」は事実である。

 だからこそ、アイルランドのように多国籍企業を誘致することで外貨を獲得している国ではGDP(国内総生産)とGNI(国民総所得)の乖離が生まれやすくなっている。