EUのデジタル関連収支が上振れする理由

 日本やドイツのように自動車の海外生産が多い場合、産業財産権主導で知的財産権等使用料が黒字を確保しやすく、これ自体はデジタル産業の競争力とは関係がない。

 また、ドイツに関して言えば、巨大な製薬企業を抱えているため研究開発ライセンス等使用料の受け取りも非常に大きそうである。

 それゆえドイツやこれを含むEUに関し、知的財産権等使用料全体をデジタル関連収支の一部と捉えることで必要以上に「デジタル貿易に強い国」という評価を下す問題を孕むが、ここは不可抗力として目を瞑るしかないというのがこの分析の問題点だ。

 強いて言えば、ドイツのデジタル関連収支は約+133億ユーロの黒字だが、知的財産権等使用料を著作権等使用に限定すれば、恐らく均衡から若干の赤字ということが推測される。

 また、デジタル関連収支を集計する上では経営コンサルティングに係るフィーなども一緒に計上してしまうことになる。よって、ロンドンやアムステルダムなどに巨大コンサルティング企業の本社機能が集中していることを踏まえれば、この点でも英国やEUのデジタル関連収支は黒字方向に引っ張られやすくなる。

 もっとも、デジタルとコンサルティングを明確に区分するのは分析者の都合であり、実態的には相互依存の部分もありそうで(IT系コンサルティング企業という言葉があるくらいなのだから)、上述の知的財産権等使用料が孕む問題ほどは大きくないかもしれない。