世界各国の予備役制度の概要と歴史

 軍の予備役は軍人とシビリアンからなる軍事組織である。

 予備役は平時においては武装せず、その主な役割は追加的な兵員が必要となった時に、その必要を満たすために活用できることにある。

(Wragg, David W. (1973). A Dictionary of Aviation (first ed.). Osprey. p. 223) 

 予備役は、軍の常備即応兵力の一部であり、国家にとり、平時における軍事支出を削減し、戦争に備える戦力を維持することを可能にするものと一般に考えられている。

 平時には予備役の兵員は、常備のフルタイムの重要な構成員とみなされているが、通例では、市民として職業に就きながら、パートタイムで軍務に従事する。

 予備役は、特定の作戦を支援するために、平時から数週間から数か月間の任務に展開されることがある。

 戦時には、予備役兵員は、常備軍兵員ほど長くはないが、一度に数か月から数年間軍務に従事することがある。

 志願兵制の国における予備役兵員は、軍事訓練の技量を維持するため、1か月のうち週末に一度程度の定期的訓練を受ける。

 予備役兵員は個人または常備の予備役の枠組み、例えば英国での陸軍予備役などの要員として行動する。

 米国の州兵、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの郷土兵(Home Guard)のように、民兵、郷土兵、州兵あるいは州軍(State Military)も軍予備役となることがある。

 コロンビア、イスラエル、ノルウェー、シンガポール、韓国、スウェーデン、台湾などの国では、予備役は兵役義務を果たしたのち何年間も義務付けられている。

 スイスやフィンランドのような徴兵制の国では、正規軍の兵役義務を終えた後に、法律により定められた年齢に達するまでの市民は予備役となる。

 これらの市民は、戦時には義務付けられた動員に服し、平時には短期間の軍事訓練に服する。

 ロシアのような、徴兵制と志願兵制が組み合わされた国では、「軍の予備役」には二重の意味がある。

 広義には、予備役となる市民とは軍の一部として動員されうる一部の市民を意味する。

 狭義には、予備役として兵役を果たす契約に署名した一部の市民を意味する。

 彼らは、軍の特定の部隊に配置することを指定されており、すべての作戦、動員、これらの部隊での作戦行動に参加することになる(即応予備)。

 その他の契約に署名しない市民(非即応予備)は、志願しない場合も動員され展開される。

(Sergey Polunin, Militaryarms.ru  (in Russian), December 25, 2020)

 一部の国の18世紀の軍事制度では、予備役として機能するように制度設計されていない場合でも、予備役として機能するよう実践され制度化されていた。

 例えば、英国陸軍は、半俸給制度(half-pay system)により、平時には正規軍に属さないが戦時には利用できる、訓練され経験を積んだ将校を国家に提供することができた。

 英国では、1757年の「民兵法令(The Militia Act)」により、予備役の制度的な枠組みが与えられた。

 民兵の効率性について時々議論は起きたものの、英国では予備役の何度かの紛争での動員を通じて、正規軍を海外での脅威に対処に振り向けるという戦略的選択が増加した。

 欧州では、ナポレオン戦争中にプロシア軍とフランス軍が戦った1806年のイエナ・アウエルシュタットの闘いでのプロシアの敗北の後、予備役が初めて重要な役割を果たすようになった。

 翌年7月のチルジット条約で、ナポレオンはプロシアに大幅な軍の削減と領土の割譲を強いた。プロシア軍は最大でも4万2000人にその陸軍を制限された。

 軍の改革者であったゲルハルト・フォン・シャルンホルストは、プロシア陸軍に「クルンパシステム(Krumpersystem)」を導入した。

 この制度により、戦時には極めて短時間に軍を拡張することができるようになった。

 プロシアはそれ以降の戦争において、訓練された大量の軍人を招集できるようになり、その制度はドイツ帝国陸軍により第1次世界大戦でも適用された。

 ドイツ帝国の頃には予備役兵は、兵役間に戦時に予備役として果たすべき行動についての指令を受け、兵役を完了した後に「戦時調整」を示された。

 米国のような国では、予備役兵は徴兵を終えた後もその任務から除隊した元の軍の要員であることが多かった。

 徴兵期間を終えてから何年間も予備役として軍務に就くには、徴兵登録をして多くの国の契約命令(commissioning orders)が必要とされた。

 予備役兵は、市民としての役割を果たしつつ、正規軍とともに基礎および専門的な訓練を受けた市民でもあり得た。

 彼らは、独立して、あるいは個人的に正規軍の弱点を補った。アイルランドの陸軍予備はそのような予備役の例である。